徴収手続

国税債権を確保するための措置として、実体的な面で国税の優先権、手続的な面で自力執行権がある。
すなわち、国税は全ての公課(雇用保険料等)及び私債権に優先して徴収することが国税徴収法において規定されている。ただし、私法秩序との調整の観点から、国税の優先権が制限される場合(法定納期限等以前に設定された抵当権の優先等)がある。
また、納期限までに納付されない国税、いわゆる滞納国税は、原則として納付の督促をした上で納税者の財産を滞納処分により差し押さえ、換価して、それによって得た金銭をもって国税に充てる手続により徴収する。しかし、納期限まで待っていては国税の徴収ができなくなるおそれがあるようなときには、納期限前においても強制徴収措置を採ることが認められている。他方、納税者の実情などによっては、直ちに滞納処分を行うことが適当でない場合もあり、このような場合には法令に基づく納税の猶予により分割納付を認めるなど、納税者の実情に即しつつ、処理を行っている。
1 原則的な徴収の手続
滞納となった国税については、通常はその納期限後50日以内に督促状により納付の督促を行うが、この督促がされてもなお国税が完納されない場合には滞納処分を開始する。滞納処分とは、差押えに始まり、換価・配当といった滞納国税を強制的に徴収するための一連の手続をいい、税務当局が裁判所の関与なしに自力で行うことができるものである。差押えは、督促後10日を経過してもなお国税が完納されない場合に、納税者の財産を換価することを目的として、その財産の処分を禁止するために行うものである。差押えを行ってもなお国税が完納されない場合は、差押財産の強制的な売却である「換価」を行い、その換価代金を滞納国税その他一定の債権に「配当」する。
ただし、納税者の財産について既に強制換価手続が開始されている場合には、上記の差押え、換価に代わる手続として、先行の強制換価手続の執行機関に対して交付要求を行うことにより配当を受けることができる。
2 納期限前の強制徴収措置
国税の納付は、通常は納期限までに行えばよいが、納税者が偽りその他不正の行為により国税を免れようとしたり、破産するなど特別の事情が生じ、国税の徴収ができなくなるおそれがある場合には、一定の要件の下に特別の保全のための手続(繰上請求、保全差押え、繰上保全差押え、保全担保)が認められている。
3 納税の緩和の措置
国税の徴収については、その確保の措置が必要な反面、納税者の事業や生活についての配慮も必要であることから納税の緩和の措置が設けられている。納税者が災害、病気、休廃業などにより納付困難となっている場合や差押財産が換価されると事業の継続や生活の維持が困難となる場合には、法令に基づく納税の猶予により分割納付を認めるなど、納税者の実情に即しつつ、処理を行っている。
なお、滞納処分の対象となる財産がない場合や滞納処分を執行することによって納税者の生活を著しく窮迫させるおそれがある場合には、滞納処分の執行を停止し、その執行の停止が3年間継続すると、国税の納税義務は消滅する。

出典:国税庁(事務年報)