第一編第四章 相塲罫線の種類と其略説
相場罫線の類別
現今市人の多く描かるゝ罫線の種類を擧ぐれば左の如し
一、立會足
二、日足
三、週間足
四、月足
五、年足
六、十銭足
七、二十銭足
八、三十銭足
九、五十銭足
十、一圓足
十一、陰陽切替足 前場後場切替足、終日切替足
立會足乃至年足
一の立會足は毎節立會の直段を表出するものにして、二の日足乃至五の年足は最低直段と最高直段とを表出する者にして終日の最高低のみを録せるものを日足、一週間内の最高低のみを畫ける者を年足と名付く。
十銭足乃至一圓足
六の十銭足乃至十の一圓は高低直段を標準とせずして、直段の高低歩合の差に依つて描不描を定むるものにして、即ち十銭足は十銭以上、二十銭足は二十銭以上の高下ある毎に(以下仝じ)幾度となく之を描畫する者にして夫丈の高下なき時は幾日の間も之を描かざる者とす
陰陽切替足
外に十一の陰陽切替罫線描畫法陰陽切替足一名酒田足と名付くる一種の描方あり、是即ち本間宗久翁の初むる處にして、其の描畫法は時日に拘はらずして其の高低に闞する者なり即ち其の日の高直が前日の高直より高き時は、前日の高直の線を延長して其位置迄持ち行き之に反して高直が前日の高直より低き時は高き直の出る迄別に描畫するに及ばざる者と定む、安直の場合に於ても之に準ず、若し其日の高安直が共に前日の高安直を越す時は両方に延長冩し置く者とする也、左に聊か其の例題を示めして了解し易からむ。
切替足の例題
例題
一日 高直 二十四圓五十銭 安直 二十四圓四十銭
二日 高直 二十四圓五十五銭 安直 二十四圓四十銭
三日 高直 二十四圓三十九銭 安直 二十四圓二十一銭
四日 高直 二十四圓四十銭 安直 二十四圓十九銭
右を以て陰陽切替の足取表を製すれば左の如し。
節の解
右の内一日の四十銭、二日の五十五銭、四日の十九銭、の如き處を節と稱す、其名稱の由來する處を案ずるに、動物の闞節が起居運動に必要なる如く、相場の運動にも此の節が必要なりとの意より名づけたる者なり、尚ほ此の描波を應用して前場後場の二回に引分けるとあり、且つ此の描法に於ては高直安直の出たる前後に注意し、其の順序に依りて描畫することを忘るべからず。